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Keychron K2 HE 提供レビュー

aojimax
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結論:

K2 HEは「あのK2のまま、ゲームも遊べるようになった」キーボードだ。Q1 HEでの経験を踏まえ、Keychronが今度は手堅く磁気スイッチを載せた現実解といえる。スペシャルエディションは木材を使用しており唯一無二の魅力がある。

Keychronがずっと育ててきた定番「K2」に、正式に磁気軸を載せてきた。個人的には正直「またK2を引っ張るのか」という思いが先に立った。KeychronのK2といえば、Mac配列のワイヤレスメカニカルを広めた立役者だ。金属フレーム、RGB LEDもあり、わかりやすい配列、ほどほどの価格。メカニカルを初めて買う人の「これでいい」が詰まったモデルだった

そのK2が、今度はラピッドトリガーに対応した。

この文脈を知らないと、ただの「磁気軸追加モデル」と誤解しがちだが、
Keychronが自分たちの看板を、敢えてゲーミングに寄せる意味は小さくない、と思う。それでも触ってみると、この製品にはKeychronらしさがちゃんと残っている。

スペシャルエディションには木材を使ったフレームが採用されていて、これが意外にチープさを感じさせない仕上がりだ。触るとほんのり手に馴染む木目で、アルミフレームの硬さと上手く調和している。

良くも悪くも、「ゲーミング」と「デスク上の道具」の間を泳がせたバランス感覚が、K2 HEの面白いところだ。

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上下はレールのように金属フレーム、左右が木製フレームパーツ

Keychronと磁気スイッチ

Keychronが「磁気スイッチでRapid Trigger」を初めて製品化したのは、 Q1 HE が最初だ。2023年初頭にクラウドファンディングで登場し、私も当時購入している。

Q1 HEはKeychronにとって挑戦作だった。アルミ削り出しボディに磁気軸を載せ、フルカスタム対応のQシリーズ路線でゲーミング要素を取り入れた結果、打鍵感は高評価だったが、一方でファームの安定性やラピッドトリガーの細かい設定周りは発展途上だったのが正直なところだ。

結果として「Q1 HEをゲーミングで運用するより、仕事用の高級カスタムとして使う方が無難」という評価が多かった。この経験が、Keychronにとって磁気軸の課題と可能性を洗い出す一歩だったのは間違いないだろう。

K2 HEはQ1 HEの後継とは言えないが、あのときの失敗を繰り返さない形で出してきたと思う。高級カスタム志向を一度捨て、元々Keychronが一番得意とする「ワイヤレスメカニカルの定番」枠に落とし込んだのがポイントだ。

結果、ファームやラピッドトリガーの挙動も(Q1HEよりは)安定しており、初心者が設定でも迷いにくい(※後述するが、問題点もある)
むしろ「何もいじらなくてもそこそこ快適」というのが、Q1 HEにはなかったK2 HEの強みだ。

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キーキャップを外した姿
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底にはシリコン

スペック

スペック面はほぼ既視感の塊だ。ラピッドトリガー、可変AP、MOD TAP、DKS、SOCD制御…最近の磁気軸で標準的に見られる仕様だ。「数値的に優れている」とか「スキャンレートが~」みたいな話をここで繰り返してもあまり意味はない。

ただ、一応触れておくと、手元での計測(いつも通り50gf押下時の底打ちから最短リセット距離)で0.43mmとなった。ソフトウェアでの設定では0.1㎜となっているため、いわゆるボトムデッドゾーンが0.33mmあることになる。これはちょっと数値を求めるユーザーには厳しいと言わざるをえない。

検証のために設定をRP 1㎜に設定すると最短反応は1.33㎜となったため、ボトムデッドゾーンの0.33㎜は常に付いて回る。ちなみに、ストローク途中は最短0.1㎜でちゃんと反応しているため、ボトムデッドゾーンによるものであることがわかる。

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自前の計測装置

打鍵感・スイッチ

今となっては珍しくGateron KS-37系列のデュアルレールスイッチを採用しており、押下圧とリニアの滑らかさに特長がある。

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KS-37系列のデュアルレールタイプ
Fujiスイッチっぽい見た目

打鍵の柔らかさと滑らかさ、静音性で非常に評価の高かったATK68(G)やPolar65(後期)と同じ系列のスイッチだ。剛性感はKeychronらしく抑え目で、ガチゲーミング軸の硬質さより柔らかい。これが不思議と「K2 HE」の打鍵感に溶け込んでいて、安いゲーミングキーボードにありがちな「カチャカチャ感」は全く無い。

普段から磁気軸を触っている層なら「KS-20互換じゃないからダメだ」とか「性能が普通すぎる」「キレが足りない」と言うかもしれない。
けれど、Keychronのユーザー層にとっては、この自然さが逆に「初めての磁気式」としてはとてもバランスが良い。

既存のK2の、あのちょうどいい剛性、軽めのタッチ感をほぼ崩さずに、
「ちょっとだけ早く、ちょっとだけ便利」に寄せてきた。無理に「eスポーツ向け」にはしない。ここにKeychronらしさを感じる。

普段はBluetoothでMacやiPadに繋いで、必要なら有線にしてゲームをちょっと遊ぶ。この両立が、K2 HEの立ち位置ではないだろうか。

一応言っておくと、K2 HEはBluetoothでもラピッドトリガーは動作するが、
レスポンスの遅さが地獄級なのでやめておいた方がいい。

キーキャップ

2 HEのキーキャップには、Keychronが近年よく採用している OSAプロファイル を使っている。形自体は標準的なOEMプロファイルに近い段差を持っていて、手を置いたときの高さや角度は違和感がない。

ただし、トップがわずかに球面になっていて、指先が自然と中央に落ち着く作りになっているのが特徴だ。

SAプロファイルほど大げさな高さはなく、OEMの扱いやすさに、ほんの少しだけ指が包まれる感触を足した感じとなっている。独特の丸みを帯びているので、本体の柔らかい雰囲気と非常に合っている。

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Keychron独特のOSAプロファイル
丸みがあってかわいい

ソフトウェア

専用ソフトでアクチュエーション調整ができるが、UIは洗練されているとは言い難い。日本語対応はしている。ボトムデッドゾーンさえ許容できれば、デバイスとしての安定性はそこまで悪くないので、基本設定だけ済ませたら放置で十分。頻繁に調整したり、性能ギリギリを攻める人向けではない。

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日本語は対応しているがちょっとクセあり

こんな人には刺さる

もしあなたが既に高性能なラピッドトリガーを触っていて、「最速のラピッドトリガーが欲しい」というならK2 HEは選ばない方がいい。

ただ、もし普段からKeychronのK2/K3/K6あたりを使っていて、あるいはデザインがすごく気に入って
「仕事用をそのままゲームでも流用できたらいいな」
「有線より無線が好き」
「打鍵感はあまり犠牲にしたくない」
こういう人には面白い選択肢になる。

K2 HEは、いわゆる「デバオタ用高性能磁気軸マシーン」ではないKeychronのK2が好きな人の机の上に、ちょっとだけゲーミングを入れた感じ。K2 HEはK2で築いてきた「デスクに置いて絵になる感じ」と「ちょっとしたゲーミング」を、手堅くまとめ直しているのが強みだ。

結論

KeychronがK2を磁気軸にしたのは「ゲーマーを獲りたい」だけではない。
既存のK2ユーザーに、「せっかくなら一度、ラピッドトリガーというものを試してみないか?」そう問いかける選択肢だと思う。

完璧なゲーミングキーボードではない。けれど、普段の仕事を邪魔せず、ちょっとだけ「速さ」を手に入れる。そのさじ加減がK2 HEの面白さだ。

結局のところ、この製品はKeychronが今まで築いてきた「良質なワイヤレスメカニカル」の延長線に、最新の磁気軸を載せてみたものだ。同価格帯の純ゲーミング軸よりスペックは見劣りするかもしれないが、普段のタイピングやBluetooth運用まで含めると、ちょっとしたお得感がある。

K2 HEは、「もうちょっと遊んでみたいKeychronユーザー」にこそ刺さる。

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しじまアオ
しじまアオ
EVERBULES代表
PC・ゲーミング系ガジェット好きオタク 物欲に負けることに定評がある あまりにも買いすぎたので、少しでもお役に立てるようレビューやニュースを書き始めた
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