ELECOM VK720AL レビュー(2025.01)
V customは常に先を行く
彼らはけして後追いをしない。
VK720ALはELECOMが開発した世界唯一の構造を持つ新型ゲーミングキーボードだ。
①ラピッドトリガー※1
②ロープロファイル※2
③ショートストローク※3
④静音75%サイズ
この4つを備えた唯一のライバル不在オンリーワン製品である(2025年1月筆者調べ)

このキーボードはELECOMが放つ新たなゲーミングキーボードの刺客だ。磁気スイッチ、ロープロファイル、ショートストロークのゲーミングキーボードがZENAIM以降市場に全く投入されない中、VK720ALはまさに“その穴”を埋める存在だと言える。
今回、ELECOMさんからご提供いただき、じっくりと使い込んだレビューをお届けする。あまりに個人的に好きすぎて熱量多めで語らせてもらうが、ぜひ最後までお付き合いいただきたい。
そしてじっくりと使い込みすぎてレビューが大変に遅くなりました。ELECOM様、大変申し訳ございません…!
性能について
接続方式:USB有線
キー配列:日本語配列
キー数:85〜86キー
キーピッチ:19.0mm
キータイプ:磁気式アナログ検出スイッチ
キーストローク:2.5mm
アクチュエーションポイント:0.1mm~2.3mm
動作圧:30~50g
レポートレート:最大1,000Hz
バックライト:1677万色RGBライティング
USBポート数:1ポート(背面に装備)
サイズ:75%サイズ
ラピッドトリガーとは
キーを押した/離した瞬間に入力・解除を反映するゲーミングキーボードの機能。キーの反応が高速になるため、FPSやアクションゲームなどの瞬時の判断が求められる場面で有利とされ、特にVALORANTにおける射撃で重要な「ストッピング」操作に大きな効果があり、2023年以降爆発的に普及した。
ロープロファイルキーボードとは
通常のメカニカルキーボードよりもキーの高さが低く設計されたキーボードのこと。スリムでスタイリッシュな外観が特徴。スペースを取らず、持ち運びしやすい他、デスク周りもスッキリさせやすい。
キーボードのショートストロークとは
キーを押したときの深さを浅くする設計や設定のこと。下記のようなメリットがある。
・押し込み状態から次のキーを押すまでの指の移動距離が短くなる
・浅い押込みで反応するように設定したキーを連打する際、入力信号と底打ちの感覚を近づけることができる
・底打ちに必要な力が減り、手首周りへの負担が軽減される
あふれるオリジナリティ
ゲーミングキーボード市場でも、磁気スイッチの登場以降、スペックや配列がほぼ同じ…という製品も多く、(他の多くの商品と同じように)外観がわずかに異なるだけで価格競争に陥る傾向がみられる。
しかし、ELECOMはネオクラッチキーキャップやスペースバーのカスタマイズ等で明確に「VK720A/ALにしかない個性」を打ち出している。その上でVK720Aは静音スイッチ、VK720ALはロープロファイルという強烈な特長をそれぞれ持っているのが強みといえる。
実際に使ってみて
VK720ALを約1か月じっくりと使ってみた感想を正直に述べると、“クセになる”という表現がぴったりだ。キーを押す感覚はとにかく軽快で、ラピッドトリガーの恩恵でVALORANTでのストッピングもスムーズ。ショートストロークのため、キーが底打ちしてもすぐ次の操作に移れる。
キーの押し始めが30gで非常に軽いのも特徴だ。ボディ内部に静音・制振構造を持っていることから、通常のタイピングも静かでスムーズ。
ELECOM伝統芸として背面にUSBポートを1つ装備しているので、ワイヤレスマウスのドングルなどを挿せるのも地味ながらありがたい機能だ。

格ゲー使用にも向いてるかも
VALORANTのようなFPSだけでなく「StreetFighter6(スト6)」のようにキーボード入力に対応している格ゲーでも効果を発揮する。
ボディが薄くて平べったいので、レバーレスコントローラーのような雰囲気を醸し出し、ラピッドトリガーも0.1mmから反応するので1フレームを争う格ゲーにおいてもメリットは大きい。
左手によるコマンド入力はフレーム単位で素早くかつ正確な入力が必要だが、ショートストロークによって底打ちが速いため、コマンド入力がしやすい。
力んで押しても通常のキーボードよりも浅い地点で止まるので、236(いわゆる波動拳)や623(いわゆる昇竜拳)などの頻出コマンドもやりやすいのだ。
ただ、コマンド入力する必要がある左手の上下左右はAP/RT 0.1mmで設定するのが良さそうだが、右手のボタンであるパンチ・キック(クラシック)、あるいは必殺技(モダン)は誤爆したときの隙が大きすぎるため、そこまで敏感に反応しない方がいいかもしれない。この辺は個人の感覚に合わせて設定ソフトEG Toolで簡単に変更できるので問題ない。
フローティングデザインの美学
VK720ALの第一印象は、そのシンプルかつ洗練されたデザインだ。ホワイトとブラックの2色展開は、ゲーミングデバイス特有のギラギラした装飾を控えつつ、どんなデスク環境にも馴染む。
ホワイトモデルはシルバーのメタリック天板で高級感と清潔感があり、白PC環境で使う人でも使いやすい。ブラックモデルはゲーミングデバイスらしい引き締まった印象がある。
フローティングデザイン(キーボード本体から、キートップが宙に浮いているように見える構造)を採用しているため、LEDがめちゃくちゃ映える。暗い部屋でいろんなLEDパターンを試してほしい、とてもきれいに光が反射する。

ロープロファイル設計による恩恵
ロープロファイル設計により、キーの高さが低く抑えられており、タイピング時の手首への負担が軽減される。これにより、長時間の使用でも疲労感が少ないだけでなく、スタイリッシュな見た目を実現している。
ロープロファイルのメリットは、反応速度が速いだけでなく、タイピングのしやすさと視覚的な美しさを兼ね備えていることなのだ。
ZENAIMをも凌ぐロープロファイルの打鍵感
VK720ALの最大の特徴は、なんといってもELECOM独自の「ロープロファイル&ショートストローク(2.5mm)磁気スイッチ」である。そしてラピッドトリガーに対応。この条件を満たすキーボードは他にZENAIMだけだ。
しかしZENAIMはプロアスリート仕様のため、静音性やクッション性はほとんどない。性能と操作性向上のために快適性を犠牲にした設計なのだろうが、正直ちょっと割り切りすぎている感も否めない。
これに対しVK720ALは薄型ボディながらシリコン吸音パッド2枚とスポンジ吸音シート1枚、計3枚の防振材を内蔵することで静音性にも配慮しており、日常使用でも不快な衝突感や金属音が鳴りにくい設計となっている。この薄いボディのどこにそんなものが…?と不思議になるレベルだ。
スペースバーのカスタマイズ機構
前作VK720Aから搭載された変態機構。誰がそこまでやれと言った。
通常のスペースバーを使うのも良いが、VK720ALではキーキャップを交換することで、スペースバーの長さや形状を自分好みに変更できる。
たとえば、親指が短い人でも快適に操作できるよう、左に無変換キーを残した短いスペースバーを選ぶことも可能だし、無変換キーを外してUS英語配列のように長めのスペースバーにして、左手親指の操作性を向上させることもできる。
このような調整が可能な点は、他のゲーミングキーボードにはない魅力だ。
指に合わせて作られた独自形状すぎるキーキャップ
ELECOM V customシリーズのキーボードは「ネオクラッチキーキャップ」と呼ばれる、独特の凹みをつけたキーキャップを採用している。100台近いゲーミングキーボードを見てきたが、キーキャップ形状にここまでこだわっているメーカーはほとんどない(ZENAIMくらいだ)

しかも、今回はこれまでのVK200/300や600A、720Aと異なるロープロファイル製品にもかかわらず、新たにロープロファイル版のネオクラッチキーキャップを作って搭載した。しっかりとPCB製で印字が剥げない二層構造(ダブルインジェクション)だ。
また新しく金型を作ったんですかアンタたちは!!大丈夫なんですか!!
相変わらずキーキャップ形状において独自路線を貫いている彼らの頑固さは相当なものだ(褒めている)
日本語配列、かつロープロファイルということで別売りのキーキャップを買ってきてカスタマイズすることは絶望的だが、LEDが透ける仕様なのも視認性・デザイン両面において非常に満足度が高い。
ただ、エンターキーとスペースだけグレーにしてツートンカラーにしたのはちょっと気になる。VK600Aまでは白/黒一色のキーキャップだったが、VK720AとVK720ALからこのツートンデザインになってしまった。
一目で「ELECOMのキーボードだ!」とわかる強みはあるので、その点を重視しているのかもしれないが、白デスクで使うならやっぱりキーキャップは白一色にするか、白のスペアキーキャップをつけて欲しかった
設定ソフトウェアは日本語でシンプル
ELECOMが日本のメーカーということもあり、設定ソフトは当然日本語対応。何か困ったことがあってもサポートも日本語対応。なんならELECOM GAMINGのXアカウントは相当フットワークが軽い、困ったことがあればきっと頼りになるだろう(無責任)
ラピッドトリガー設定方法
ラピッドトリガー設定も、適用したいキーを選んで(複数選ぶときはCtrlキーを押す)、数字を0.1や0.2にするだけ、簡単。
※ちなみに筆者は、数値設定においてスライダーで設定数値を選ぶことができないので、直接「0.1」という数値を入力しなければいけないのがめんどくさいな〜とずっと思っている。

https://www.elecom.co.jp/support/manual_web/products/type_01/tk-vk720al/?elparam=r_mh1044
プロファイル設定でより便利に(オススメ設定)
実はEG Toolの設定画面左上にこんな感じのやつがある ↓

この機能、ラピッドトリガーを使ってるならほぼ必須といっていいのだが、あまり使われていないようだ。もったいない!!
プロファイルとは、設定パターンを保存して切り替えるための「箱」のようなもの。プロファイル1には日常用にラピッドトリガーOFFにしておいて、プロファイル2にVALORANT設定(WASDとかにバチバチのRT0.1㎜設定)をいれておき、それを切り替えて使う。
プロファイル1の設定はFn+F1、プロファイル2の設定はFn+F2でいつでも呼び出せるし、EG Tool(設定ソフト)が起動していなくても問題ない。最初は覚えづらいかもしれないが、一度覚えるだけで、ラピッドトリガーのせいで「あああああああああああああ」みたいな文字が入ることがなくなるので是非覚えておきたい使い方だ。
※もっとパターンを増やしてもいいが、おすすめは3つまで。あんまり増やすとワケわからなくなるし、プロファイルを直接指定できるのは1~3まで(Fnキー+F1,F2,F3)だけ。F4はプロファイル順送り(4→5→…最初に戻る)になので不便。
それぞれのバックライトLEDの光り方を思いっきり変えておいて「あ、今は日常モードだな」「今はVALORANT用敏感モードだな」と自分がわかるようにするのがオススメ。
総評
ELECOM VK720ALは、デザイン性、機能性、そして実用性を兼ね備えたゲーミングキーボードだ。特に、日本語配列を求めるゲーマーにとっては、現時点で最良の選択肢の一つと言える。(執筆時点における評価の高さで言うとライバルになり得るのはPulsarくらいだ)
これから買うゲーミングキーボードに悩んでいる人は、ぜひVK720ALを手に取ってみてほしい。量販店で気軽に購入できるのもELECOMの強みだ。きっと「他との違い」に驚くはずだ。
